
宍戸 大樹インタビュー
――いよいよ『S-cup』が目前です。現在の心境はいかがですか。
「2004年(リザーバーから準優勝)は、棚ぼたというか偶然のチャンスを活かしたものだったと思うんですよ。前回(2006年。準決勝で緒形健一に判定負け)は、大会前にK-1 MAXでブアカーオに負けて、その名誉挽回、失地回復の気持ちが強かったです。それに2004年に負けたアンディ(・サワー)ともう一度闘うというモチベーションもあった。ですが今回は、また別な気持ちですね」
――というと……。
「今回は何よりも、緒形さんと闘いたいんです。もちろんS-cup優勝というのは選手として最高の夢であり目標なんですが、それと同じくらい緒形さんともう一回闘って、勝ちたいという気持ちが強い」
――緒形さんに勝たない限り、優勝もないわけですしね。
「はい。だから今回は、緒形さんと闘うために何がなんでも出たかったんです。正直、前回の試合はまったく歯が立たなかった。あの時に感じたのは“自分はまだ、この人とやる器じゃなかった”ってことです。器が違ったし、覚悟の量も違いましたね。練習はもちろん普段の生活、仕事ぶり、姿勢がすべて試合に出たんだと思います。そういう意味で、器が違いましたね。あの日の緒形さんは、決勝でアンディと闘った時もまったく揺るがなかったじゃないですか。あの日に、僕は“目指すべきはこの人だ”とあらためて気付いたんですよ。アンディを追っているつもりだったけど、自分が背中を見ていたのは、やっぱり緒形さんなんです」
――今回の『S-cup』で、その緒形さんのようになりたい。緒形さんを超えたい、と。
「その気持ちが、2年前に固まりましたね」
――前回の『S-cup』からの2年間を振り返ってみて、いかがですか。
「ブアカーオに負けて、S-cupでも準決勝で負けて。その後K-1 MAXの一回戦、それに城戸(康裕)戦でも負けましたからね。負けた負い目を消すために闘って、さらにどん底に落ちた感じでした。あの時はファイトスタイルを、足を止めて打ち返す形に変えてたんですよ」
――倒して勝ちたい、と。
「でも、それで結果が出ないわけだからスタイルや練習方法を見直さなきゃいけなかったんです。今は考えが変わりましたね。自分は狙ってKOするようなタイプじゃないんですよ。スピードとスタミナで相手をかく乱して、疲れさせて、とにかくコツコツと攻める。それが自分のスタイルなんです。それを突きつめていけば、お客さんが楽しんでもらえる試合にもなると思いますし。今年、日本代表決定トーナメントをやって、そのことがはっきり自覚できました。記者会見でも言いましたが、今回の3試合、すべて延長までやって勝つくらいの気持ちでいます」
――代表決定トーナメントの2試合(山口太雅戦、金井健治戦)は、いずれも素晴らしい内容でした。あの闘いに“S-cupへの試運転”“前哨戦”という意識は……。
「全っ然なかったです。そんな余裕ないですよ(笑)。山口は死に物狂いできましたね。ファーストコンタクトで“今までの山口じゃない”って感じました。向こうがガムシャラにきたから、こっちもガムシャラにいくしかなかった。迎え撃つなんて意識で、大人の試合をしてたらやられる、と。でも、それがよかったんだと思います。僕がこれまでどうやって勝ってきたかといったら、ガムシャラにやったからですからね。そういう気持ちを、山口には思い出させてもらいました」
――原点に帰ることができた。
「はい。金井戦もそうですね。金井さんは圧力と連打が凄い。そういう相手に僕が勝つには、足を使うしかないんですよ」
――まさに、宍戸選手の最も得意なスタイルですよね。
「勝つために必死にやったら、結局そうなるんですよね。それにあの試合では、“自分が絶対にS-cupに出るんだ”と信じ切ってました。緒形さんとやるためには絶対に負けるられないし、負けるわけがない。どんな手を使ってでも、1ポイント差でもいいから勝つんだって思ってました」
――“Road to S-cup”の闘いによって、宍戸選手は本来の持ち味を取り戻すことができたわけですね。
「精神面でもファイトスタイルの面でも、そうなったんじゃないかと思います」
――今回の出場メンバーに関しては、どんな印象がありますか?
「これは……通好みというか、見ている人たちが感じている以上に大変なメンバーだと思います。(クリス・)ホロデッキーは、吉鷹(弘)さんが褒めてたこともあって前から注目してたんですよ。それがS-cupに出ることになって、しかも自分と闘うことになるとは思わなかった(笑)。これは正直、キツイですよ。初来日で強さのモノサシがないから、僕が勝って当たり前みたいに考える人もいると思うんですけど、でもホロデッキーが弱いわけがない」
――その厳しさが分かられにくいと。
「それはトーナメント全体にいえると思います。実力とかレベルでいったら最高でしょうね。きっと、終わってみて初めて大変さが伝わるトーナメントになるんじゃないですかね。そういう大会に自分が出られるのは、身が引き締まります」
――準決勝では、サワー選手と対戦する可能性もありますからね。
「そこは、聞かれれば“自分のスタイルを貫いて、勝ちにいくだけです”と答えるんですが……。正直、アンディと準決勝をやることになるかどうかは分からないと思ってます。自分も含めて、誰が一回戦で負けてもおかしくない。そのくらいの気持ちじゃないと、このトーナメントは勝てないと思ってます」


