シーザー会長が振り返る2006年の激闘! そして2007年はどうなる?
――今回はシーザー会長に、2006年の総括をお願いします。
「もう忘れちゃったよ(笑)」
――いやいや(笑)。まず上半期なんですが、宍戸選手がエースとして一本立ちした印象があります。ジダ戦、カノレッティ戦、シャファー戦と3連勝で。
「うまく勝ってはいたんだけど、ただ足りないものも見えてたよね。メインイベンターとしての魅力がね」
――それはやはりKOですか。
「やっぱり倒しにいかなきゃ、お客さんは喜ばないじゃない。その辺でプロ意識が足りないんじゃないかと思った。その結果が、K-1でのKO負け。あれで欠けてる部分が全部出たんだよ」
――一方、緒形選手はいかがですか。5月のポール・スミス戦では大逆転KO勝利、9月の大野戦でも壮絶な打ち合いと、『S-cup』に合わせて調子を上げてきた感があります。
「この瀬戸際で、責任感とか本来の実力が出たよね。今までも練習では強かったんだけど、それが試合で出なかった。甘さというか、優しさがあったんだよね。それが取れたでしょ、今年は」
――5月には会長が病気になって、会場に来られないという残念な事態もありました。
「会場に行けないなんて、初めてだからね。そういう状況の中で、緒形が持ってるものが爆発したんじゃないかな。自分自身、病気をして“もうダメかな”っていう時期はあったんだよ。でも“絶対このままじゃ終われない”って思うようになった。そういう姿勢を選手たちに見せられたのは、逆によかったんじゃないかと思うよ。神様がね、俺の体を使って若いやつらに教えてくれたのかなって」
――シーザー会長の不在で、選手たちに危機感が芽生えたというか。
「それが結果として、『S-cup』にもつながったんじゃないかな。いい試練になった。病気のことも、そういうふうに捉えてるんだよ。俺はもう、全部プラスに考えるからさ。緒形に関しては、大野戦が大きかったよね。あれだけ打たれて、でも打ち返して自分のペースにもっていけたでしょ。あれで自信がついたと思う」
――対戦相手の大野選手の活躍も光りましたよね。
「彼はもうシュートボクシングになくてはならない存在になったよね。簡単にいえば“K-1側”なのにスパッツはいてね。その心意気がいいよ。シュートボクシングの観客にも、大野のファンが多いんだよ」
――その大野選手にKO負けした菊地選手も、その後はSHINOBU選手、土井選手に連勝と躍進しました。
「相手を待たなくなったよね。自分からどんどんいくようになった。土井なんかもう、完全に読まれてたよね。ローキックの選手なのに、距離を潰されてね。そういう部分はセコンドの吉鷹が策を与えてたんじゃないの。吉鷹のバックアップもあって、本当に伸びてきたよね、菊地は」
――逆に土井選手は、連勝していたにもかかわらず、菊地戦で壁にぶつかってしまましたね。
「まだ心の弱さがあるんだよね。練習でも、どこかで妥協してる。やっぱり普段やってることが、試合で出ちゃうんだよ。妥協するクセをなくさないと、今のままでは厳しいよ。結婚もしたんだしさ、もう一皮むけないと」
――こうした日本代表メンバー争いがあった上で開催された『S-cup』は、本当に素晴らしい大会になりました。
「準決勝で日本人対決になるの組み合わせは、俺が考えたんだよ。反対意見もあるかなと思ったんだけどね。やっぱり、日本人同士でシュートボクシングを体現する試合を見せてほしかったから。ただ、結果としては見せられなかったんだよ」
――緒形選手自身も「投げを見せられなかった」と言ってました。
「逆にアンディやドーソンは、投げにもトライしてたじゃない。外国人の方がシュートボクサーらしかったんだよ。いい大会だったけど、そこは課題だよね」
――緒形選手と宍戸選手、弟子同士が闘うのを見ている気持ちはいかがでしたか?
「内心では“もっとしっかりやらんかい!”って思ってたよ。大会としてはよかったんだけど、シュートボクシングという競技としては、まだまだだよね」
――厳しいですねえ(笑)。
「いい大会だったからって、酔いしれてる場合じゃないからね。反省して、前に出ないと。ずっとその繰り返しだったからね。立ち止まってたら進歩はないよ」
――一方、準優勝だったサワー選手はいかがですか。K-1 MAXでも準優勝でしたが、2年連続で決勝進出してますし、実はかなり凄い成績ですよね。
「凄いよね。たいしたもんだよ。ただ、最近は穴が出てきてる感じもあるんだよ。その原因はミット打ちにあるんじゃないかな。リンホージムに所属してた頃は、ジョン会長がミットを持ってたよね。彼は体格がアンディと同じくらいだから、うまく合ってた。でも今、ミットを持ってるアンドレ・マナートは体が大きいから。力が入ってしまうし、フォームも自然と大きくなってしまう。それで右のパンチを打つ時、左のガードが下がっちゃうんだよ。だから緒形の右ストレートをもらっちゃった。カノレッティ戦もそうじゃない。今のアンディが直さなきゃいけないのはそこだね」
――いずれの選手も課題があるということは、逆に2007年以降、伸びてくる可能性もありますよね。
「そうだね。それプラス、新しい選手も育てないといけない。主力の平均年齢が上がってるからね。来年は、俺が若い選手を直接、見ていこうと思ってるんだよ。デビューしてない練習生でも、いい素材がいっぱいいるから。今までは練習生の指導は土井や宍戸に任せてたんだけど、もう俺がやるしかないなと。やっぱり未来を考えなきゃいけないから」
――次の世代を、会長が直接手がけると。
「人を見る目に関してはね、いま教えてる現役のやつらよりよっぽどあるから。20代の頃からやってるんだからさ」
――実際、会長の指導で一流選手に育った人は多いですよね。
「それはやっぱりね、その人間の持ってる可能性を見出すってことだよね。だって大江(慎)なんてひどかったんだよ」
――ひどかったって(笑)。
「いや、本当にさ。だけど、どっかに光るものがあったわけ。そういうことを、これからもしていかないとね。10代の終わりから20代はじめで活躍できる素材を育てないと。これはやるよ、本気で」
――試合としては、軽量級が面白くなりそうですね。12月大会では韓国の18歳、ジュン・ビュングが歌川選手に勝利してますし。
「あの選手はいいよね。将来性があると思う。韓国の選手は、いま伸びてるよね。実はこれから、韓国に支部を作る話もあるんだよ」
――韓国は格闘技ブームですからね。これから要注目でしょう。
「韓国でテレビ放送したいって話も来てるしね。ヨーロッパでも『ユーロスポーツ』で放送されてて、かなり評判がいいんだよ。だから世界的な活動っていうのもね、これからは多くなってくるんじゃないかな。やっぱり興行としても競技としても、世界に目を向けなきゃいけないからね」
――若い選手の育成に海外進出と、会長もますます忙しくなるんじゃないですか。
「その辺はね、若い連中にもしっかりやってもらいたいけどね。あと来年は『GROUND ZERO』かな」
――ワンマッチのビッグイベントですね。ますます2007年が楽しみになってきますね。……あ、それから今年は森谷さんの引退試合もありましたね。会長も病院から駆けつけられて。
「あの野郎はねぇ、ほんとダラダラしやがってね(笑)」
――ダラダラしやがって(笑)。
「入院して、抜糸してない状態で会場に行ったら、あの試合でしょ?」
――ククククク!
「まあ、よく乗り切ったよね。俺が」
――あ、会長が(笑)。
「森谷はこれから広報、マッチメイカーとしてどんどん責任が重くなっていくわけだから、もっと頑張らないといけないよね。マッチメイクって、独特の感性が必要なんだよ。“これはKOになるな”っていう試合でも、意外に判定になったりするじゃない。そういう勘を磨いていかなきゃいけないからね。そういう意味で、あいつも来年は勝負どころ。若い世代にしてもそうだけど、やっぱり将来を見据えていかなきゃいけないから。2007年は、ちょうどその転換期になると思うから期待してほしいね」

