The age of "S" Vol.5 at 後楽園ホール 2002.11.5

第8試合

勝者:アンディー・サワー(リンホージム) 5R判定(3-0)

-全てはシュートボクシングのために。

土井、そして後藤。次々とマットに沈められて行く日本人選手の姿を見て、シュートボクシングを誰より愛するこの男は黙っていなかった。前回9月の後楽園大会のメイン終了後、たまらずマイクを握った緒方は、サワーとの対戦をシーザー会長に直訴。満場の拍手の中で「命を賭けて打ち合います」と叫んだ緒方の決意は、決して嘘ではなかった。総合格闘技からの復帰戦の相手がサワーとは、現実的にはかなり厳しい選択であると言わざるを得ない。しかし、「真のエース」という緒方の高いプライドと揺るぎない自覚が、またも緒方を茨の道へと導いて行く。

「現時点でやれる事は全てやった。今は心地良い緊張感の中にいる」試合2日前の記者会見でそう語った緒方の表情は、まるで何かを達観したかのような極めて純度の高い透明感が漂っていた。一方、S-CUPで優勝を飾り、「史上最強の19歳」という称号を手にしたサワーにとっても、一度手にした頂点はそう簡単には譲れない所。キッチリ勝って、「立ち技世界最強」の地位を不動のものにしたいというのが本音だろう。

互いに見合う静かな立ち上がりの中、その均衡を破ったのは緒方の右ローだった。左ジャブを的確にヒットさせ、徐々に自分の間合いに持ち込みたい緒方に対して、サワーはワンツーからの右ローでそれを許さない。サワーは得意のレバーブローを織り交ぜながら、華麗なコンビネーションで緒方を次第に追いつめて行くが、緒方も左ジャブをコツコツと当てながら、自分の距離を保って行く。

3ラウンド、緒方のヒザがサワーの急所に入るアクシデントがありタイムストップ。程なくして再開したが、ここから恐怖の「サワータイム」が始まってしまった。怒濤のパンチ連打で緒方を追いつめ、ワンツーからの飛びヒザを容赦なく顔面に突き刺して行く。パンチの連打で応戦する緒方であったが、前に出た所に左ハイを合わされ、これが緒方の顔面を捉え、この試合初のダウン。辛うじて立ち上がったものの、ダメージが深い緒方をサワーが見逃すはずはなく、さらに右のショート気味のフックで2度目のダウンを奪う。

4ラウンド、驚異的な精神力でパンチの連打を放つ緒方。これがサワーの顔面を見事に捉え、サワーはたまらずクリンチに。しかし一度火が付いたサワーの勢いを完全に止める事は出来ず、左右のレバーからの飛びヒザで、緒方はこの試合通算3度目のダウンを奪われてしまう。最終ラウンドに入り、両者熾烈な打撃戦を繰り広げるが、これまでに負ってしまったダメージが余りに深い緒方は、サワーの左ショートフックにまたもダウンを許してしまう。「これで終わった」。誰もがそう思った時、緒方は信じられない精神力で立ち上がり、なおも一太刀入れたいと前に出る。勝敗は3-0の判定でサワーがものにしたが、倒されても倒されても決して諦めない緒方の姿に、対戦相手のサワーは無論の事、会場中が惜しみない声援を送った。

試合後、リングに上がったシーザー会長から、来年2月に予定されている次回大会において、オーストラリアの強豪ダニエルドーソンが、サワーとの対戦に名乗りを挙げた事が発表された。「シュートボクシングのスパッツを履かない奴がチャンピオンというのは納得が行かない」というドーソンは、並々ならぬ決意で来年、Sのリングに立つだろう。「立ち技世界最強」の座を賭けて、Sのリングは更に熱を帯びる。

第7試合

勝者:後藤龍治(STEALTH) 5R2分48秒 TKO スタンディングアームロック

試合2日前に行われた記者会見で、対戦相手である後藤を目の前にしながらS-CUP決勝で敗れたアンディサワーと再戦する事しか語らなかったイーゴに対して、「試合で全て証明してやる」と、敢えて平静を装った後藤であったが、その心の奥底では激しい怒りの炎を燃やしていた。

S-CUP、まさかの1回戦敗退、シーザー会長に直訴してまで実現に漕ぎ着けたアンディサワー戦での判定負けと、もう後藤には本当に後が無い。一方、中国散打のナショナルチームの中心的存在となる事が確実視されているイーゴは、一刻も早くS-CUPで味わった屈辱を払拭し、来るべきオリンピックへのステップとしたい所。ここで負ける訳には行かないというのが偽らざる本音だろう。試合は序盤から緊張感溢れる、手に汗握る展開となった。

左ローからのワンツーで後藤が前に出れば、イーゴはスピードの乗った左フック、右ミドルを突き刺し、さらに左ハイをヒットさせ、格の違いを見せつけようとする。 しかし後藤はすかさず右ハイで応戦し、一歩も引かない決意を体で表して行く。2ラウンド、散打特有のタックルからの投げを狙うイーゴに対し、後藤は何とアームロックで切り返し、会場は早くもヒートアップ。程なくしてアームロックは外れてしまったが、イーゴ対策は万全であるという後藤の自信が見て取れた。3ラウンドに入ると、イーゴはS-CUPで対戦相手を幻惑した、散打特有の横蹴りを多用し始める。

後藤は冷静に対処し、左のレバーブローから右ストレートというコンビネーションで、イーゴの足を止めにかかる。4ラウンド、すっかり余裕を失ったイーゴは、凄まじいパンチの連打を繰り出し、後藤の接近を許さない。この猛攻にはさすがの後藤もダメージを負い、やや動きが鈍る。5ラウンド、後の無い両者は激しい打撃戦を繰り広げるが、タックルに来たイーゴに対し、後藤は再びアームロックを敢行。今度はこれがガッチリと極まり、これ以上は危険と判断したレフェリーが試合をストップ。勝利の女神は後藤に微笑んだ。

試合後、マイクを手にした後藤の、「これがシュートボクシングや!」という咆哮に、詰めかけた観衆は惜しみない拍手を贈った。この後藤の勝利により、シュートボクシングは、また新たな歴史の幕を開けた。

第6試合

勝者:ポール・スロウィンスキー(ブンチュージム) 3R1分40秒 TKO レフェリーストップ

初回からスロウィンスキーの重い左右のロー、左ミドルが伊賀を捉える展開となったが、伊賀もパンチの連打を確実にヒットさせ、さらに首投げでシュートポイントを奪う。しかしスロウィンスキーの重い左右のローで、早くも足が流れ始めた伊賀は、2ラウンド、ダウンを奪われ後が無い展開に。伊賀は巧みにパンチを上下に打ち分け、的確にダメージを与えてはいるのだが、下半身に意識が集中した所にスロウィンスキーの右ハイ、縦ヒジが容赦無く襲いかかる。信じられない精神力でパンチを繰り出す伊賀であったが、3ラウンドに2度のダウンを奪われ、2度目のダウンでレフェリーが試合をストップ。伊賀は惜しくも敗れた。

第5試合 【SB日本Sライト級】

勝者:植松直哉(K'zファクトリー) 3R判定(2-0)

現役の修斗ランカーと、田村潔司の愛弟子の「異色」の対戦が実現した。こういったファンのニーズを先取りして行く姿勢こそが、シュートボクシングの根強い人気の原因の一つであると言えよう。

試合は、互いのメンツが激しくぶつかり合う好勝負となった。序盤、ムエタイ修行の成果とも言うべき右ロー、ミドルで先制する植松に対し、ワンツーからの左ハイで応戦する西内であったが、中盤、勝負に出た植松はフック気味の右ストレート、組み付いてのヒザ蹴りを的確に ヒットさせ、さらにパンチの連打で、試合はやや植松ペースに。何とか勝機を見出したい西内は、最終ラウンド、2度の浴びせ蹴り、左のストレートを繰り出して行くが、あと一歩の所で及ばず、判定は3-0で植松が勝利した。

第4試合 【90Kg契約】

勝者:鈴木亮二(東京元気大学GGG) 3R判定(3-0)

DEEP、パンクラスでの活躍等で、格闘技ファンの認知も高まりつつある大久保と、プロボクシングのライセンスも持つという鈴木の一戦は、「他流試合」の名に恥じない激しい打撃戦となった。

両者友にワンツーローと、基本に忠実な攻撃の組み立てで勝機を見出す中、パンチの正確さにおいて、若干の優位を鈴木がキープし、勝敗の行方は判定に。僅差ながら3-0で鈴木が勝ち名乗りを受けた。

第3試合 【SB日本Sバンタム級】

勝者:今井教行(シーザージム) 3R判定(3-0)

第2試合 【SB日本Sバンタム級】

勝者:歌川暁文(U.W.F.スネークピットジャパン) 3R判定(3-0)

第1試合 【SB日本Sウェルター級】

勝者:菊池浩一(寝屋川ジム) 3R1分29秒 TKO セコンドタオル投入により

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