デビュー戦以来7連勝を飾ってきた、SB日本スーパーフェザー級・村田聖明選手。昨年12月(TDCホール大会)で初の黒星がつき、屈辱を晴らすべく挑んだ今年2月の後楽園大会(SHOOT BOXING 2016 act1)で、再び敗北を味わった。勝敗が分かれた瞬間、静かに目を落としリングを下りる。勝負に勝敗は付きもの。そして、光が当たるのは当然のごとく勝者。そして、来る6月の後楽園大会(SHOOT BOXING 2016 act3)への出場が決まった。21歳と若き村田選手が「今の言葉」を語る。
連勝から「敗北」を知り、今の心境の変化は?
自信を失っています。デビューから7連勝していたんですけれど、そこからの2連敗なので。連勝していたときも、天狗だったわけではないし、元々自信があったわけではないけれど、勝ち続けてこれたので。負けてしまい、より自信がなくなっています。もっと頑張らなきゃ勝てないですね。
試合に勝った次の日は嬉しいし、楽しい気持ちになる。でも、負けたときは応援しに来てくれた友達とご飯に行っても、申し訳ない気持ちになります。勝って終わるのと、負けて終わるのは全然違う。もちろん試合内容も大事なんですが、やはり勝敗の結果は大きく違うなって思います。
シュートボクシングの世界に飛び込んだきっかけとは?
特に「これ」というのはなかったんですが、小さいころから「(シュートボクシングを)やるんだろうな」と思っていました。そういう環境があったので。※村田選手はシュートボクシング創始者・シーザー武志会長の長男。
でも、いろいろと他のこともやってみたかった。だから、サッカー、水泳とかもやっていました。しかし、高校生になったときに「シュートボクシングをやろう」って思いました。小さいころから、ずっと憧れていましたし、かっこいいなって思っていたので。
今は「小さい頃から早くに練習を頑張っていればよかったな」と思ってしまいます。それは「試合でいい試合ができない」、「KOができない」、「格上の選手と試合をするとテクニックで負けてしまう」からです。技術も体力もそうですが、まだまだ自分は大したことない。中学でサッカーとかやっていた時間を、シュートボクシングに費やしていれば「もっと強くなれたのかな、失敗したかな」って、思ってしまうときがあります。今は次の試合に向けて、朝走りこむ距離を長くしたり、ダッシュを多めに走っています。
村田選手にとって「かっこいい選手像」とはどんな人だろうか。
緒形さん(初代SBスーパーウェルター級王者)、宍戸さん(初代SB東洋太平洋ウェルター級王者)の試合は、たとえ攻撃をもらっても絶対に心が折れずに打ち返す。倒されても倒しにいく。その試合を観ているお客さんたちは、みんな立ち上がって喜んでいて。そんな姿とかを、小さいころから見てきたんです。
強い人には人が寄ってくる。試合を通して、人が人を引き寄せる。「また試合が観たい」って来てくれる。そんな人に憧れます。小さいころから見てきた緒形さんは、そんな人でした。でも僕にはまだパワーもないし、スピードもないし、沸かせる試合もできていない。本当にまだまだですね。僕もチャンピオンになったら少しは自信が持てるのかな、と思うけど、チャンピオンになることが目標ではないので。父が創設したシュートボクシングをつなげていく、自分が少しでも支えていけたらと思っています。
大学で経済学部に通う村田選手。日々の練習と両立しながら、どのような生活を送っているのだろうか。
今、僕は大学4年生なのですが、周囲は就活真っ只中らしいです。「らしい」というのは、僕は全く就活ができていません。ちょっと、焦っています。親に大学まで行かせてもらったので就職したいのですが、とりあえず6月の試合が終わってから考えようと。就職しても選手は続けるので、就職先は、夜の練習に行けるよう時間をうまく使えることと、転勤がないところを探すつもりです。
普段は学校に行く前に走って、夜は学校からそのままジム練習です。帰宅後に課題をやると寝るのが2時、3時になることもあります。忙しいときもありますけど、練習には関係ないと思ってやっています。
シュートボクシングの本部が置かれるシーザージム浅草所属の村田選手。シュートボクシングの看板を背負っていた先輩・宍戸大樹選手が4月に引退をしてからのジムの様子を尋ねた。
ジムでは僕も若い方かと思っていたけど、気付けば中学生もいて若い子が増えていますね。
坂本優起さん(現SB日本ウェルター級王者)とMASAYAくん(前SB日本スーパーライト級王者)が、みんなを引っ張っていってくれています。笠原弘希(SB日本スーパーバンタム級)や後輩が連勝しているのを見ていると、僕ももっと試合をして先輩として強くありたいって思います。
MASAYAくんの練習は、迫力がすごいんです。MASAYAくんの練習を見ると「自分はまだまだ追い込めていない」って思います。僕はまだ気持ちが強くない。だから常に試合を意識して、気持ちを強くして練習をしています。学校やバイトとかあっても、忙しいことを言い訳にせず、毎日頑張ること。うちのジムはみんな頑張って練習をしているので、自分だけ頑張っていると思う部分はないですね。ジム練習に自分の練習をプラスアルファでやらなくては強くはなれません。
自信を失いかけても立ち止まらずに突き進もうとする、村田選手の原動力は何だろう。
試合をして一番嬉しいのは、お客さんが喜んでくれること。勝ったときに「おめでとう」と声をかけてもらえるのが嬉しいんです。そこに向かって練習もがんばっていけます。父や緒形さん、宍戸さんのように実力もあって人がついてくる人。自然と人を引き寄せる人は、本当にかっこいいです。僕ももっと自信をつけて、そんな人たちみたいになっていきたいですね。
勝負の世界に身を投じ、勝利の甘美も敗北の苦味も味わった村田選手。その雪辱を果たすのも、非情だが試合しかない。そんな村田選手が出場する6月5日(日)の後楽園大会「SHOOT BOXING2016 act 3」の闘いぶりに、今後の真価が問われる。
聞き手 : 高橋 藍
村田聖明
SB日本スーパーフェザー級2位
1995年3月2日生まれ。東京都出身。シーザージム浅草所属。177センチ/60キロ SB日本スーパーフェザー級2位 9戦7勝2敗